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技術情報

Aabel ユーザ事例 - 岡山大学地球物質科学研究センター 辻森先生


お名前: 辻森 樹 先生
ご所属(お役職): 岡山大学地球物質科学研究センター(助教)
URL: http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/

ご研究内容

 地質学の研究をしています.特に,岩石・地球化学や地球年代学の分野です.
 具体的には,造山帯表層の地質試料(岩石や鉱物)について,サブミクロン?ミクロンスケールの組織解析,化学組成分析,同位体年代測定などを行い,地球の過去の地殻変動・地殻進化や造山運動の歴史の解読に挑戦しています.


Aabelを使われた動機について

 カリフォルニアにいた頃,MacOS Xにいち早く対応したグラフ作成ソフトウェアの1つとしてAabelを知人から紹介され,2003年3月にバージョン1.0のパッケージ版を購入しました(バージョン1.0購入後,バージョン1.1からMacOS X 10.2環境下で使い始めました).これまでMacで使っていた別のグラフソフトウェアにはないユーザーインターフェイスの良さと実装された機能の豊富さをすぐに気に入りました.グラフ作成機能をもったコマンドを打つタイプの数値解析ソフトウェアとは異なり,直感的に大量の分析データをグラフ化でき,即戦力として活躍しました.同年5月には大幅に改良された1.5ベータ版が発表され,本格的な使い込みはその1.5ベータ版からです.その後,MacOS Xを常に最新のものへと更新しつつも,AabelはどのバージョンのMacOS X環境下でも安定動作し,現在はIntelプロセッサ搭載Macで,2007年にUniversalアプリケーションとして一新されたバージョン2(最新版は2.4)をMacOS X 10.5環境下で使っています.バージョン2からはソフトウェアのアイコンだけでなく操作性にも変更が加えられましたが,ユーザーインターフェイスはより洗練された感があります.バージョン1.5の頃からこれまでに開発元(Gigawiz社)にバグ報告を何度か行いましたが,何れの場合も非常に速やかな対応で,バグ修正のパッチを更新してくれました.ユーザーサポートも気に入っています.

 Aabelは点・線グラフやヒストグラムの作成だけでなく,スパイダーグラム,構造地質や結晶方位の解析で欠かせないステレオグラムの作成,さらに,数値地図データによる主題地図作成の機能を標準で持っており,今では研究には欠かせないソフトウェアの1つです.


Aabelの活用方法、事例について

「特に,点グラフ(散布図)の作成について」

 私の研究・教育活動の一端で,Aabelは特に,大量の鉱物化学組成や同位体組成のグラフ作成に非常に役立っています.私は機器分析で得られた数値データを,試料や分析の種類毎にAabelのワークシートファイルで管理しています.Aabelのワークシートはオブジェクト(行)と変数(列)で構成されたスプレッドシート型で,最左列と最上行にはオブジェクトと変数のラベル用セルがそれぞれ用意されています.オブジェクト毎(ここでは1つのデータ点に相当)にシンボル(マーカ)設定が可能で,1つのワークシート内でオブジェクトのグループ化が可能です.また,変数列単位で計算式を与えることも可能です.

 Aabelではワークシート内の変数列単位で,データの最大・最小値,あるいは平均値,標準偏差など情報をプロパティ情報として確認することができます.プロパティ情報には区間幅を直感的に調整できるスライダ付のヒストグラムが表示されます.分析結果をまとめるとき,必要な記述情報を一目するために,ワークシートの変数列のプロパティ情報が役立っています.

 複数のワークシートのデータから点グラフ(散布図)を作成する場合,まず,新規にデータベースメタファを作り,それに必要なワークシートファイルをドラッグ&ドロップしてリンクします.この際,データベースメタファファイル内にフォルダを設け,複数のワークシートファイルを任意にグループ化し,それぞれのフォルダ毎にシンボル(マーカ)設定が可能です.このグループ化によって,それぞれのワークシート内のオブジェクトグループ毎のシンボルだけでなく,データベースメタファでグループ化されたワークシート群のシンボルを実際のグラフ表示で利用することが可能になっています.

 大量のプロット点をもつ散布図では,しばしばグラフの大きさを変更せずに,グラフの一部の範囲だけを拡大表示させたい場合があります.Aabelではグラフ表示のためのグラフィックビューアに設置されたツールバーのズームツールを使い,直感的に任意の範囲を拡大可能です.さらに,グラフィックビューアにおいて,グラフ内の特定領域のプロット点を選択すると,それらがワークシート内のどのデータに対応するのかリアルタイムで知ることが可能です.もちろん,グラフィックビューアはデータベースメタファファイルとワークシートにダイナミックリンクされており,それらの変更内容をリアルタイムに反映します.それは1つのデータベースメタファファイル(あるいはワークシート)から複数のグラフィックビューアそれぞれに複数のグラフを作る場合も,1つのグラフィックビューア内のサブレイヤーやページに複数のグラフを用意する場合にも同様にダイナミックリンクが機能します.

 Aabelにはデータのフィルタリング機能が用意されています.任意に定義したフィルタを組み合わせて特定の条件を満たすデータのみのプロットが簡単に行えます.例えば,角閃石という造岩鉱物の主要元素化学組成を点グラフにプロットするとき,私はフィルタリング機能を使い,いつでも角閃石のタイプ毎にデータプロットできるようにしています.

 地質学分野では2変数の点グラフに加えて,しばしば3変数の三角グラフを使います.Aabelは標準で三角グラフを作る機能があり,2変数の点グラフ同様,直感的に任意の範囲をグラフサイズの変更無しに拡大可能です.

 分析データの解析において,複数の点グラフを一度に表示したいことが良くあります.Aabelのグラフィックビューアはサブレイヤー機能によって複数のグラフやチャートを1つのファイルに用意することが可能です.また,それらの機能とは別に,散布図の種類の1つとして選択可能な「散布図行列」を用いて,1つのグラフィックビューア内に複数の2変数の点グラフを作成することが可能です.これは,例えば,岩石の全岩化学組成のハーカー図の作成や,特定の元素間の相関関係を解析するには非常に便利な機能です.

 誤差表示に関しては,ワークシート内のオブジェクトの変数に個別に誤差を用意することによって誤差バーの表示が可能です.1つの変数に対してそれぞれ正と負の誤差を用意すれば,非対称の誤差バーの表示も可能です.誤差の変数をワークシートに用意しない場合でも,全てのプロット点に対して,一様の標準偏差・標準偏差に基づく誤差バーを加えることが可能です.

 ここに紹介したような操作で作成したグラフは,MacOS Xの描画エンジン(Quartz)を活かした状態で,簡単にApple社のKeynoteなどのプレゼンテーションソフトウェアにPDFファイルとしてコピー&ペースト可能です.また,Aabelのグラフィックビューア内には,文字や線・図形の追加や,PDFファイルなどのペーストが可能であって,Aabelだけで十分な書類を作ることも可能です.さらに,Aabel作成のグラフやチャートはPDFやPICT形式として書き出せ,ベクトル編集グラフィックソフトウェアにおいてより詳細なカスタマイズが可能です.私の2004年以降の全ての学術論文やプレゼンテーションに用いたグラフは全てAabelで作成したものです.


Aabelで作成した散布図の例(ガーネットの化学組成の点グラフ)


ガーネットの化学組成の点グラフ
 Aabelのグラフィックビューアから書き出したオリジナルPDFファイル.
(画像クリックにより, PDFファイルをダウンロード)

散布図を作る過程

 上記散布図を作る過程のスクリーンショット(画像クリックで拡大).
グラフィックビューア「garnet_plot_MFZ.vie」中の2つ散布図には,それぞれ21試料(21ワークシート)中の2402点の分析データ(2402オブジェクト)が,2つのシンボル(青と赤)にグループ化され,プロットされている.また,1つのグラフィックビューア中に,2つのサブレイヤーを設け,それぞれ三角図と散布図行列を表示している(左下のサブレイヤーマネージャー「Graphic Sublayer Manager」参照).オブジェクトのグループ化はデータベースメタファに設けたフォルダで管理されている(右上データベースメタファファイル「MFZ_Grt_EMP.db」のウィンドウ参照).散布図「garnet_plot_MFZ.vie」上で選択したプロット点(水色にハイライトされた点)は,ワークシート「G-BRB41-Grt.ws」においてリアルタイムハイライトされる.また,ワークシート上で任意の点のラベル機能を有効にすることで,グラフ上にオブジェクトのラベル情報が表示される.

グラフィックビューア「garnet_plot_MFZ.vie」

 PDFに書き出す前のグラフィックビューア「garnet_plot_MFZ.vie」のスクリーンショット(画像クリックで拡大).
グラフ完成後に研究室のロゴをペーストし,テキストを加筆した.

Aabelの魅力、気に入っている点について

 Aabelの魅力は,コマンドを打つタイプの数値解析ソフトウェアとは根本的に異なる直感的な操作と,強力な統計処理能力も含む実装された機能の豊富さです.そして,Mac用に開発されたソフトウェアらしいユーザーインターフェイスの良さと地質学分野の研究に欠かせない機能を標準で持っていることにつきます.


(掲載日:2008年2月6日)
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