Spartan バージョン情報

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バージョン202021年リリース)

異性体に関する新機能(異性体生成ツール)

  • 新たに立体異性体/位置異性体(stereoisomer/regioisomer)を自動生成する高機能なツールが追加されました。入力情報は、立体異性体を生成する際の反転中心位置が示された適切なマーカーや、位置異性体を生成する際に変更される結合の情報を持つ単一分子(異性体)から構成されます。異性体生成ツールは、異性体生成物に至る遷移状態にも拡張されています。
  • ツールの結果は異性体のリストとなり、以下のような計算に利用されます。
    • Equilibrium Conformer 平衡配座計算:異性体毎に最適な配座リストを生成
    • Conformer Distribution 配座分布計算:異性体毎にボルツマン因子配座リストを生成
    • NMR計算:利用可能な配座のボルツマン平均を求めた後に、各異性体のDP4スコアを生成

NMR(ボルツマン平均NMR法)に関する新機能

  • 構造的に柔軟な(coformationally-flexible)分子に対するNMR化学シフトの計算値と実験値を比較するための新しくシンプルで格段に速いプロトコルが実装されました。このプロトコルは、実験値に最も一致するプロトンや13C化学シフトを与える程よく低エネルギーな配座の中から選択することにより、Spartan’18でリリースされたプロトコル(高精度だが時間のかかるボルツマンウェイトに基づく計算)の代替手法を提供します。
  • Spartan’20では、自動異性体生成を構造的に柔軟な分子を扱う従前の又は新たなプロトコルと組み合わせることにより、合成化学者によるNMR分光学の重要な用途である既知の反応に対する立体化学や位置化学の確立を1つのステップで行います。従来のプロトコルでは、1つの異性体の単一配座から始めて、配座異性体間で適切に平均化された値が、新プロトコルでは、異性体毎に実験データに最も適合するプロトンと13C化学シフトが結果として得られます。
  • DP4スコアを精査することにより、どの異性体が実験で得られたプロトンと13C化学シフトに最も一致するかを決めることができます。オリジナルのGoodman DP4処方へ1つのステップでアクセスできる方法も実装しました。

カップリング定数に関する新機能

  • 計算されたカップリング定数と実験値との比較に基づいた2-bond3-bondCHカップリング定数に対する経験的関係。
  • 3-bondのHHカップリング定数に関する経験的(カープラス式のような)関係は以前から利用されてきましたが、CHカップリング定数に関しては(我々の知る限り)これまで得られておらず、類似しているものの、より複雑な関係になっています。

2D NMRスペクトルに関する新機能

  • 計算された化学シフト、並びに、計算または実験で推定されたHHおよびCHのカップリング定数に基づいた2D NMRスペクトル、COSY(プロトン対プロトン)およびHMBC13C対プロトン)。
  • 観測されたHHカップリングおよびCHカップリングを入力すると、COSYおよびHMBCスペクトルの計算結果と簡略化された実験結果を視覚的に比較することができます。

その他の新機能

  • 天然物データベース
    • Spartan’18 で導入されたプロトコルにより構造的平均化され計算されたNMRスペクトルならびに実験的なNMRスペクトルを持った約 3,500 の化合物が含まれた天然物データベースであり、新しい文献の発行に応じて継続的に更新される予定です。
  • SSPD (Spartan Spectra & Properties Database)
    • プログラムと同時に自動的にインストールされるSSPDのサブセットは、ωB97X-D/6- 31G*モデル構造からIR振動数を含むように拡張されました。300,000以上の完全なデータベース(別途要インストール)は、現在、ωB97X-V/ 6-311+G(2df,2p)のエネルギーをプロパティとして含んでいます。これらのエネルギーには、Molecule PropertiesReactionsダイアログからアクセス可能です。
  • 並列計算
    • NMR計算や振動計算を除き、従来10コア以上で頭打ちとなっていた並列計算性能を改善しました。現在は、エネルギー計算や構造計算において、15コア程度以上で性能の横ばい状態が起こります。
    • 振動計算コードの並列計算の性能がやや向上しました。
  • GUI
    • 2D描画:2Dスケッチビルダーへ結合数を増やすためのオプション機能(単結合二重結合、二重結合三重結合)が追加されました。また、くさびスタイルによる立体化学マーカー機能が追加されました。実験的なプロトンおよび13C化学シフト、HHおよびCHカップリングの2D描画への添付が可能となりました。
    • 距離測定:リング内の距離がワンステップで修正できるように変更されました。
  • 出力サマリー
    • HTML表示フォーマットが改良され、データテーブルを開くとその場(on-the-fly)で計算されるようになり、表示・動作速度が格段に高速化されました。
  • 計算機能の強化
    • ダブルハイブリッド汎関数:エネルギー計算に限定されますが、ωB97M(2)ダブルハイブリッド汎関数が追加されました。

バージョン18(2018年リリース)

配座に関連する新機能

自動化された多段階配座解析
正確なボルツマン分布を得ることができる多段階計算が導入されました。
MMFF法、Hartee-Fock法、密度汎関数モデルを結合してボルツマン分布を求めることができます。B97M-V/6-311+G(2df,2p)[6-311G*]エネルギーとB3LYP/6-31G*基底関数、または、ωB97X-V/6-311+G(2df,2p)[6-311G*]エネルギーとωB97X-D/6-31G* 基底関数の組み合わせで計算されます。基底関数とエネルギーを求める理論モデルに関して、ユーザーがカスタマイズすることが可能です。
Spartan・多段階計算画面

 

NMRに関する新機能

配座異性体を考慮した自動化されたNMR計算
配座解析と同様、複数配座に対してボルツマン平均NMRスペクトラムを求める自動化された多段階計算機能が新たに追加されました。経験的に修正されたB3LYP/6-31G* or ωB97X-D/6-31G*モデルによってNMR化学シフトが計算されます。
Spartan・NMR計算画面

 

DP4の導入
Goodmanによって提唱されたDP4解析が可能になりました。B3LYP/6-31G*またはωB97X-D/6-31G*モデルのいずれかを使って、計算されたNMR化学シフト、若しくは、実験的なNMR化学シフトが立体異性体または構造異性体(またはそれぞれの異性体のボルツマン平均NMR)の候補の中でどれに一番適合するかを決定することができます。
カップリング定数
これまでのSpartanでは、ビシナル(3-bond)HHカップリング定数の推定に拡張されたカープラス式を用いていました。Spartan’18では、ジェミナル(2-bond)、ビシナル(3-bond)、遠隔(4-bond以上)のHH/CH/CCカップリング定数について、すべてフルに計算する、若しくは、フェルミ接触相互条件のみを使った計算をすることができます。
より正確かつ長い範囲のHHカップリング定数を使うことにより、前のバージョンに比べてより現実的な2D COSYプロットを得ることができます。また、CHカップリング定数は2D HMBCプロットの計算を可能にします。
前のバージョンとの互換性を担保するために、カープラス式を用いたビシナル(3-bond)HHカップリング定数を計算させることも可能です。
GUIに関する新機能
3D構造から2Dスケッチへの変換
3D構造から2Dスケッチへの変換が可能になりました。これにより、従来SSPD内に提供されていた2Dスケッチのライブラリーが置き換わられ、ユーザーが追加するどのような有機化合物でも2Dスケッチを得ることができるようになりました。生成された2Dスケッチはスペクトラムやプロットにコピー・ペーストすることができます。
Spartan・3D構造サンプル画面

 

Spartan・計算画面

 

Spartan・2Dスケッチ画面

 

出力ファイル
3D構造から2Dスケッチへの変換
サマリーアウトプットダイアログが変更され、NMR化学シフトとカプリング定数の表やIRとRaman振動数・強度、UV/可視光吸収振動数・強度をそれぞれ独立にPDFファイルとして保存することができます。また印刷することもできます。

 

その他の重要な変更

エネルギーデータベース
Spartanのスペクトル及び特性データベース(The Spartan Spectra & Properties Database(SSPD))は、ωB97X-V/6-311+G(2df, 2p)エネルギーモデルにより計算された結果を含むようになりました。これらは既存のωB97X-D/6-31 G*モデルに比べ、より正確な反応エネルギーを提供します。
これらのエネルギーは、プロパティーダイアログや反応ダイアログからも入手可能です。
反応ダイアログ
反応エネルギーを計算する際に反応ダイアログでSSPD内のωB97X-V/6-311+G(2df,2p)エネルギーに基づいた計算ができるようになりました。
また、反応エンタルピーやGibbsエネルギーを推測するために、EDF2/6-31 G*から計算された振動データを使うこともできます。
Spartan・反応ダイアログ

 

並列計算性能の強化
並列計算は共有メモリー振動数計算を含むようになりました。計算性能は、8コア以上のシステムで改善されました。
化学シフトラベル
実験的なNMR化学シフト並びに、ボルツマン平均化で計算された化学シフトと実験的な化学シフトの差に対するラベルが使用可能となりました。

 

バージョン16(2016年リリース)

GUIに関連する新機能

  • 2Dスケッチの機能拡張、無機物や有機金属を描くための周期表、官能基、リガンドのパネルを装備
  • 遷移状態探索機能を2Dで可能に
  • 縮合環の入力が3Dで可能に
  • IR Ramanスペクトルの実測値(dx)の入出力
  • NMRスペクトルの実測値(cml)の入出力
  • SDファイルへの出力時オプションとしてSpreadsheetのデータを出力可能
  • SpreadsheetのAddボタンでPropertiesダイアログと同じ種類の追加が可能に
  • Reactionsダイアログに`”Balance”ボタンを装備
  • 生体高分子の新しい表示方法の追加
  • InChi検索によるChemSpiderサイトの分子検索
  • Helpツールの拡張によるアドバイス機能
  • R/Sキラル中心の変換機能をボタン化
  • SSPDのすべてのエントリーにIUPAC名と2Dスケッチ図を追加
  • ユーザー定義のアノテーションの表示
  • “Property”マップのカラースケールを標準の赤<緑<青のほか 赤<白<青を追加
  • “Property”マップの数値領域をデフォルト以外に最大最小と切り替え可能に
  • リボン上およびSpectraパンのボタンを改良

 

計算に関する新拡張機能

  • 密度汎関数のパネルの再編:標準ではB3LYP,EDF2,ωB97X-D,M06-2X,M06とし他は以下のパネルから選択する
    • GGA 汎関数: B86PW91, BLYP, BPW91, B97-D2, SOGGA11, PBE-D3, VV10
    • GH-GGA 汎関数: B3LYP, B3LYP-D3, EDF2, B3PW91, B97-3, MPW3LYP, SOGGA11-X
    • RSH-GGA 汎関数: ωB97X-D, ωB97X-V, ωB97X, CAM-B3LYP, N12-SX,LC-VV10
    • mGGA 汎関数: B97M-V, M06-L, BMK, M11-L, TPSS-D3
    • GH-mGGA 汎関数: M06-2X, M06, M08-HX, M08-SO, MPW1B95
    • RSH-mGGA 汎関数: M11, , ωB97M-, ωB97X-V, MN12-SX
  • キーワードによる汎関数のカスタム化と追加。
  • 波動関数ベースの高次相関モデル
    • G3(MP2)elect, G3elect, G4(MP2)elect, G4elect, G4
  • 励起状態計算でFull TDDFTが可能
  • フレキシブルな分子のNMR解析のレシピの導入(未実装)
  • 第三世代のNMR化学シフト補正をB3LYP ωB97X-Dの6-31G*と6-311G*に実装
  • 基底系の再編
    • Pople: STO3G, 3-21G, 6-31G*, 6-31G**, 6-31+G**, 6-311G*, 6-311+G**, 6-31G(2d,p), 6-311+G(2d,p), 6-311+G(2df,2p), 6-311+G(3df,2p)
    • Dunning: cc-pVDZ, aug-cc-pVDZ, cc-pVTZ, aug-cc-pVTZ, cc-pVQZ, aug-cc-pVQZ Ahlrichs/Weigend: def2-SV(P), def2-SVPD, def2-TZVP,def2-TZVPPD, def2-QZVP, def2-QZPPD
  • Databaseの拡張
    • ωB97X-Dによる約275,000件の分子、6-31G*基底による構造とNMRスペクトル
    • 6-311G(2df,2p)基底によるエネルギー
    • これと同様にEDF2/6-31G*の結果も格納
    • SSPDのエントリーにはIUPAC名(3000件の分子には慣用名)と2Dスケッチの図を含みPropertiesダイアログで閲覧可能
    • Spartan’16にはSSPDのサブセット約6,000件を内蔵、またSpartan’16 Parallel SuiteにはSSPDの完全版 総エントリー数約55万件を添付

 

バージョン14(2013年リリース)

GUIに関する新機能

  • タッチパネルに完全対応し、アイコンやツールバーを変更しました。表示のカスタマイズも可能です。
  • 複数のドキュメントを開く際、タブ表示を選択することができます。
  • 軌道エネルギーダイアグラムにより、便利な単一エネルギーダイアグラム表からアクセスして分子の占有・非占有軌道を表示することができます。
  • 洗練されたサーフェスダイアログには頻繁に用いられるグラフィックモデル用新メニューを搭載しました。
  • サーフェスプロパティダイアログからアクセスできるサーフェスクリッピング機能により、計算されたグラフィックモデルの内部をビジュアル化することができます。
  • サーフェスプロパティダイアログから複合マップの選択エリア計算機能にアクセスできます。
  • 分子特性ダイアログで定量的構造活性相関(QSAR)および熱力学的特性の情報を得ることができます。
  • Spartanスペクトル・プロパティデータベース(SSPD)には、赤外線(IR)および核磁気共鳴(NMR)スペクトル、分子特性、原子特性、また構造活性相関(QSAR)の記述を含んでいます。 (Parallel Suite には完全版がバンドル。その他の場合は別途ライセンスが必要。)
  • 核磁気共鳴(NMR)スペクトル表示には、新たにCOSY、HSQC、およびHMBCを追加しました。
  • Spartan分子データベース(SMD)とSpartanスペクトル・プロパティデータベース(SSPD)ではデータマイニング、統計分析、プロット機能を利用することができます。
  • 公式エディタダイアログにより、Spartan分子データベース(SMD)とSpartanスペクトル・プロパティデータベース(SSPD)のクエリを簡単にカスタマイズすることができます。
  • データベースプレビューダイアログから、ウィキペディア名称自動検索機能を利用することができます。

 

計算に関する新拡張機能

  • ラマン周波数およびラマン拡散強度計算、Hartree-Fock法およびDFTモデルのラマンスペクトル表示。
  • NMR化学シフトの計算(EDF2モデル)補正スキームの精度は13C:1.4~1.6ppm,1H: 0.1~0.15ppm 19F: 3.4ppm 程度です。
  • シリコンやリンを含有する分子を組み込み、T1熱化学レシピを拡張しました。
  • RI-CIS(D)には色階調を追加し、励起状態の平衡配置が可能に。
  • 振動周波数がHartree-Fock法とDFTで並列化(Parallel Suiteのみ)。
  • Hartree-Fock法とDFTでラマンスペクトル計算が可能。
  • Windows・Linux双方で完全64ビット版が完成。提供中。
公開日:2019/10/19
最終更新日:2024/01/23