WIEN2k

ウィーン工科大学のK.Schwarz教授らによって開発された(L)APW+lo法によるバンド計算プログラム

wien2k

製品概要

WIEN2k は、密度汎関数法( DFT )による固体の電子構造計算プログラムパッケージです。ポテンシャル形状にマフィンティン近似のような球対称近似を使用しない全電子フルポテンシャル法の一つ、(線形化)拡張平面波法に局在軌道を拡張した(L)APW+lo法を採用しており、高効率、高精度なバンド構造計算が可能です。

フルポテンシャル化されたLAPW法(FP-LAPW、FLAPW)の他、APW基底またはLAPW基底に局在軌道(lo、LO基底)を追加することで波動関数を効率よく表現し、全電子計算手法にも関わらず計算コストを抑えたDFT計算が可能です。また、DFT 計算において、局所(スピン)密度近似( LDA )もしくは、一般化された密度勾配近似( GGA )の改良版を使用することができ、相対論効果を考慮した全電子計算が可能です。その他にも数多くの機能が提供されています。

WIEN2kは世界中で3600以上のユーザーグループにライセンスされており、また、Google scholarで約19000件の論文に引用されています。

開発元:オーストリア TU Vienna

主要な機能

計算可能なプロパティ

  • LDA、GGA、meta-GGA(libxcインターフェース)、LDA+UとEECE、軌道分極、Hybrid-DFT
  • 中心対称または非中心対称性を持つセル、230 の全空間群をビルトイン
  • スピン分極(強磁性または反強磁性構造)、スピン軌道結合
  • シーケンシャルモード、k点並列計算モード(非MPI、低速ネットワーク向け)、大規模並列MPI計算モード(共有メモリ、またはInfiniband等の高速ネットワーク向け
  • エネルギーバンド(Fig. 1) および 状態密度(Fig. 2
  • 電子密度(Fig. 3) およびスピン密度、 X 線構造因子、ポテンシャル、STMシミュレーション、AFMシミュレーション
  • Bader らによる “atoms-in-molecule” ( AIM )法
  • 全エネルギー、力、平衡配置(Fig. 4)、構造最適化、弾性定数、分子動力学(Nose Thermostat)
  • フォノン解析プログラム( K.ParlinskiによるPHONON、A. TogosによるPhonopy )へのインターフェイス
  • 電場勾配、異性体シフト、超微細場、NMRケミカルシフト、NMRナイトシフト
  • X 線放射と吸収スペクトル、電子エネルギー損失スペクトル
  • 光学的性質
  • フェルミ面

解析の流れ

WIEN2kは、多数の独立したFortran90プログラムから構成されており、それらはCシェルスクリプトを介してリンク(連携動作)されています。Webブラウザとw2webインターフェイスを使ってWIEN2kを実行することができますが、経験豊富なユーザはコマンドラインからWIEN2kを実行することもできます。

解析の主な流れは以下の通りです。

  1. 構造の定義 : cif形式ファイルのインポートや空間群に対応。対称性を検出可能 (Fig. 5)
  2. 初期化 (Initialize) : 半自動の初期化機能が実装されており、順を追って計算に必要となる入力ファイル等を生成可能
  3. SCF計算の実行 :  原子位置の同時最適化の有無を選択可能
  4. プロパティの計算 : w2web の「Tasks」メニューのガイドに基づき、各種解析が可能 (Fig. 6)

解析の進め方については、ユーザガイドの 3章「Quick-Start」を参照することで、おおよその全体像を把握することができます。

 

GUI・解析イメージ

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Fig.1 エネルギーバンド図 Fig. 2 状態密度 Fig. 3 電子密度
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Fig. 4 平衡配置 Fig. 5 構造定義 Fig. 6 プロパティの計算

 

技術情報

技術文書・関連情報

  • はじめてのWIEN2k(日本語簡易ガイド)(弊社お客さま向け; 要ログインID、パスワード)
  • ウィーン工科大学開発グループらによるWIEN2k総説

WIEN2k: An APW+lo program for calculating the properties of solids. (https://doi.org/10.1063/1.5143061)

P. Blaha, K.Schwarz, F. Tran, R. Laskowski, G.K.H. Madsen and L.D. Marks, J. Chem. Phys. 152, 074101 (2020)

  • S.Cottenier (Univ. Gent, Belgium)によるDFTおよび(L)APW法の導入ガイド (推奨)

DFT and the Family of (L)APW-methods: a step-by-step introduction (PDF形式)

  • WIEN2k 最新版ユーザガイド (開発元サイト・英語)

WIEN2k User’s Guide (PDF形式)

  • WIEN2k を用いた学術論文リスト(開発元サイト・英語)

WIEN2k/WIEN97/WIEN95 Publications

 

 

バージョン情報

 

動作環境

推奨環境

  • WIEN2kプログラムは、Fortran90で書かれており、Linux/Unixの多くのプラットフォーム上で動作します(PC・ワークステーション単体からHPCクラスタまで)。
  • 最も効率的なプラットフォームは時間の経過とともに急速に変化していきますが、最高の価格性能比を実現する高メモリ帯域幅を持つIntelアーキテクチャをベースにした(Intel Core i7Xeon等を用いた)Linux PCが登場すると予想されます。(開発元によるベンチマーク結果はこちら)。
  • Intel Fortranコンパイラ(ifort)及びMKLライブラリ(www.intel.com)、またはGNU Fortranコンパイラ(gfortran)及びOpenBLASライブラリのインストールが必要です。
  • 小さな系(単位セルあたり約10原子まで)のために少なくとも1 GBのメモリが必要であり、大規模なシステムではより多くの物理メモリが必要です。現時点では、マルチコアCPUで、1コアあたり2 – 4 GBのメモリを推奨します。なお、スワップスペースはその2倍必要となります。
  • メモリ16GBを搭載したワークステーションではユニットセルあたり100原子、64~1024コアの高速ネットワークを搭載したクラスタではユニットセルあたり1000原子超の動作実績があります。また、少なくとも1GB(大規模な場合は10-1000GB)のディスク空き容量が必要です。
  • k点分割による並列計算に対応しており、PCクラスタ環境で効率の良い計算を実行できます。ネットワーク通信速度は 1 Gb/s で十分ですが、ネットワークファイル共有(NFS)、リモートシェル環境( rsh または ssh )の設定が別途必要になります。
  • 単一の k点に対して、微細粒度の並列計算が可能です。この場合、高速な通信環境(共有メモリまたはInfiniband等の高速ネットワーク、 1 Gb/s Ethernet では不十分)と MPI(Intel MPI、Open MPIなど) 、FFTWELPAおよび ScaLAPACK 等が別途必要になります。
  • 全てのオプションを利用するためには( w2web および外部可視化ツール XCrySDenを含む)、次のパッケージがインストールされている必要があります。 XCrySDen、tcsh、ghostview ( 要 png サポート)、gnuplot ( 要 png サポート)、PDFビューア、ウェブブラウザ ( firefoxなど )、Perl、python (2.7以降)、octave。さらに任意で、VESTAWannier90LibxcPhonopyなどの有益なパッケージを追加インストールすることができます。

グラフィカルユーザインターフェイスとユーザガイド

ユーザフレンドリーな環境 w2web ( “WIEN to WEB” )を利用し、各アプリケーションに対応した入力ファイルの作成と編集が可能です。また、電子密度や DOS のプロット等の各種操作のガイド機能も付属しています。

ユーザガイド( 約300ページ、 pdf および html 版)では、基本的な操作方法と入出力ファイルの詳細が解説されています。

 

外部の可視化ソフトとの連携

現在のバージョンの w2web ( “WIEN to WEB” )では、描画視覚ツール XCrySDenと直接連携して描画することができます。XCrySDenを用いて、原子の構造を描画や、2Dや3Dの電子密度をプロット、k点メッシュの生成、フェルミ面の可視化等を行うことができます。XCrySDen以外のWIEN2kと連携可能な描画ツールとしては、VESTAが推奨されます。

これら2つのツールでは、cif形式のファイルの読み書きが可能です。XYZ形式ファイルについては、読み込みのみが可能です。

 

※重要:WIEN2kは、ダウンロード版のみのご提供となります。CD-ROM等のインストールメディアおよび印刷マニュアル等は付属しておりません。ご注文時にご連絡いただく登録ユーザ宛に、開発元から直接ダウンロードサイトの情報が電子メールにて連絡されます。(メール本文中にInvoiceとありますが、支払いは弊社にて対応しますので、こちらは無視して頂いて結構です)。

※WIEN2kは、実行プログラム形式ではなく、ソースコードで配布されています。ダウンロードの後、Fortran90コンパイラにより、プログラムを実行形式にビルドする必要があります。(※x86-64 Linux環境のみ、ビルド済みのプログラムが配布されています)

 

ライセンス形態

WIEN2kのライセンスは、所属機関(一般・官公庁・教育機関)によって異なります。

 

価格情報

WIEN2kのライセンス価格は、所属機関(一般・官公庁・教育機関)によって異なります。ライセンス形態と価格については、お問い合わせフォームからお問い合わせいただくか、弊社営業までお問い合わせください。

 

ライセンスの種類

商品名 価格(税別)
WIEN2k 一般用 お問い合わせください
WIEN2k 官公庁用 お問い合わせください
WIEN2k 教育機関用 お問い合わせください
WIEN2k オンサイト(出張)インストール 100,000円~

※上記価格は、予告なく変更する場合がございます。

 

オンサイト(出張)インストールについて

弊社スタッフがWIEN2kを導入されるサイトへ訪問し、導入支援を行うサービスです。インストール対象システム等により、料金体系が異なります。また、遠方地の場合、交通費実費を別途ご請求させて頂きます。詳しくはお問合わせください。

 

FAQ

FAQはこちら

公開日:2020/01/08
最終更新日:2023/12/21