EMPIRE
大規模並列計算に対応した半経験的分子軌道法計算プログラム

目次
製品概要
EMPIREは、非常に大きな系を扱うことができる最新の半経験的分子軌道法計算プログラムです。大規模並列計算に対応しており、非周期境界条件下で10万原子まで、周期境界条件下で5万原子までの計算が検証されています。分子系の規模に応じて数千コアまでの高効率の計算が可能で、計算可能な分子系の大きさにはソフトウェア的な上限は設定されていません。
EMPIREは、欠陥やドーパントを含む広範な結晶系、非常に大きな繰り返し単位をもつアモルファス系、二次元電子デバイス、自己組織化した集合体などの計算が可能で、材料科学分野の研究にも有用です。また、局所近似を用いないため、電気活性(electroactive)系の研究にも適しています。
また、生物学や医薬化学では、量子力学に基づいたコンピュータ支援によるドラッグデザイン(CADD)が可能で、酸化還元活性をもつタンパク質の電子移動など、タンパク質全体の特性を調べるための計算エンジンとして利用できます。ソフトマターのシミュレーションでは、アンサンブルモデルの古典分子動力学シミュレーションのスナップショットに対して、EMPIREを用いた一点計算がしばしば行われています。
現在、MNDO、MNDO/D、AM1、PM3、PM6、RM1、hpCADD、MNDO-Fハミルトニアンが提供されています。パラメータファイルは可読可能なASCII形式で、ハミルトニアンを特徴づけるために必要な情報が全て含まれています。また、EMPIREの計算は完全に透過的(transparent)で、ユーザーはカスタムハミルトニアンを容易に実装することも可能です。
オプション製品として、ポストプロセッサEH5cubeが提供されており、EMPIREによって出力されたHDF5形式バイナリ波動関数ファイルをGaussian Cube形式ファイルに変換することができます。
開発元: CEPOS INSILICO GmbH
関連製品
EH5cube
EH5cubeは、EMPIREのポストプロセッサです。EMPIREは、重要な情報のみを含む小さなASCII形式ファイルと、詳細な情報を含むプラットフォームに依存しないHDF5形式のバイナリ波動関数ファイルを出力します。このHDF5(.h5)ファイルに含まれる情報から、分子や周期系の全ての電子的特性を再現することが可能です。例えば、.h5ファイルを読み込み、電子密度、分子軌道、プログラム入力で指定したグリッドまたは空間内の点における局所特性(局所イオン化エネルギー、局所電子親和力、局所的な分極)を含むGaussian Cube形式ファイルを生成することができます。
Cepos Suite
EMPIRE(+EH5cube)+ParaSurf+CImatchのバンドル版
CImatch
等電子密度面や局所特性に基づき分子の重ね合わせを行うソフトウェア
詳しくは、こちら
ParaSurf
分子表面を構築し局所的な特性と記述子を計算する基本モジュール
詳しくは、こちら
CADDLE / SAR-caddle
CADDLEは、高品質3D表示が可能なWebベースの分子モデリングシステム(EMPIREのシングルノードバージョンを含む)
SAR-caddleは、エクセルファイルを入力データとして使用できるQSAR/QSPRモデルの構築と適用のためのWebベースソフトウェア
詳しくは、こちら
主要な機能
- エネルギー一点計算、構造最適化、遷移構造最適化、基準振動解析、分子動力学計算
- MNDOベースのハミルトニアン(MNDO, MNDO/D, AM1, PM3, PM6, RM1, hpCADD, MNDO-F)
- PCMによる溶媒和計算
- 並列効率のよい大規模並列計算が可能(非リニアスケーリング; 分子系サイズにソフトウェア上の制限なし)
- 波動関数をHDF5形式で出力可能
- 対応ファイル形式
- 入力 : XYZファイル(.xyz/.xmol) / Structure Data File(.sdf) / MOPAC、VAMP生成(.dat)
- 出力 : ログファイル(.log) / バイナリ波動関数ファイル(.vwf) / Structure Data File(.sdf) / HDF5ファイル(.h5)
- ポスト処理ソフトEH5cube(オプション)
- HDF5フォーマットの波動関数データをGaussian cubeファイル形式に変換可能
技術情報
関連動画
柔粘性結晶の分子間結合:MNDO-F法による分子動力学計算
EMPIREは、非常に効率的で効果的なBorn-Oppenheimer分子動力学[1]だけでなく、MNDO法で分散相互作用を扱うため、電子密度に革新的な”Feynman”摂動を適用したMNDO-Fハミルトニアンを利用することができます[2-4]。
次の動画は、MNDO-F法を利用したNVTアンサンブル(カノニカルアンサンブル)の分子動力学シミュレーションの様子を示しています(非周期境界条件・気相中・298 K)。36個のアダマンタン分子(936原子)から成るクラスターは、分子間の分散力のみによって結合しており、75 psのシミュレーションでは解離しないことから、MNDO-F法による分散力の扱いが優れていることがわかります。
動画:アダマンタンクラスター(298K)
時間をやや長くしたNVTアンサンブルシミュレーション(1 ns)ではクラスターが消失(蒸発)する様子がみられます。次の約10分間の動画では、最初の0.4 nsのトラジェクトリを示しています。
動画:アダマンタンクラスターの消失(298 K)
アダマンタンは室温で柔粘性結晶相(plastic crystalline phase)として存在し、これは分子が結晶格子のサイト上で回転できることを意味します。次の動画は、アダマンタン結晶に対して、MNDO-Fを用いた3D周期境界条件(繰り返し単位がアダマンタン36分子)、400 Kでの75 psのNVTシミュレーションを行い、中心部のアダマンタン分子を表示しています。中央の分子の格子サイト上での回転の様子は、シミュレーションの終盤で見ることができます。
動画:アダマンタン結晶(400 K)
フラーレンの衝突とC120フラーチューブ(fullertube)への融合
次の動画は、MNDO-F UHF singlet(broken symmetry法)による初速 600 m/s で接近する2つのC60フラーレンの衝突シミュレーションの結果を示しています。トラジェクトリは、5 psのNVEシミュレーション(黒背景)に続いて、1000 Kで10 psのNVTシミュレーション(灰色背景、アニメーション速度は2倍)、298 Kで10 psのNVTシミュレーション(銀背景)で構成されています。衝突の結果、歪んだC120フラーチューブが形成され、最終的には従来のフラーチューブ構造にアニーリングされます。
動画:フラーレンの衝突とC120フラーチューブ(fullertube)への融合 (1000 K・298 K)
リファレンス
- EMPIRE: A highly parallel semiempirical molecular orbital program: 3: Born-Oppenheimer moleculardynamics, J. T. Margraf, M. Hennemann and T. Clark, J. Mol. Model., 2020, 26, 43. DOI: 10.1007/s00894-020-4293-z
- A Feynman dispersion correction: A proof of principle for MNDO, M. Kriebel, K. Weber and T. Clark, J. Mol. Model., 2018, 24, 338. DOI: 10.1007/s00894-018-3874-6
- The Feynman dispersion correction for MNDO extended to F, Cl, Br and I, M. Kriebel, A. Heßelmann, M. Hennemann and T. Clark, J. Mol. Model., 2019, 25, 156. DOI: 10.1007/s00894-019-4038-z
- Correction to: The Feynman dispersion correction for MNDO extended to F, Cl, Br and I: M. Kriebel, A. Heßelmann, M. Hennemann and T. Clark, J. Mol. Model., 2019, 25, 257. DOI: 10.1007/s00894-019-4142-0
- Heat Capacities and Thermodynamic Properties of Globular Molecules. I. Adamantane and Hexamethylenetetramine, S.-S. Chang, Shu-Sing and E. F. Westrum, J. Phys. Chem., 1960, 64, 1547-1551. DOI: 10.1021/j100839a050
ユーザマニュアル
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- EMPIRE20 ユーザマニュアル(開発元サイト; 英語)
バージョン情報
バージョン20(2020年9月リリース)
- 励起状態
- UHF Natural Orbital法を用いた配置間相互作用(CI)計算が、閉殻系と開殻系(最大3重項状態)の両方で利用可能
- 遷移状態最適化
- 遷移状態に対して信頼性の高い最適化アルゴリズムを採用
- 溶媒和シミュレーション
- 基底状態計算においてPCM溶媒和モデルを利用可能
- 原子座標に基づく多極子解析
- 分子の静電特性を原子中心の単極子、双極子、四極子の配列として取得可能
- 局在分子軌道
- 局所的な軌道を計算し、SDFやEH5ファイルに出力可能(ただし、現在のアルゴリズムでは低分子にのみに適用可)
- HDF5による初期推定
- 初期推定(initial guess)の読み込みファイル形式に従来の.vwfと.auxに加え、EMPIRE _e.h5 HDF5形式ファイルをサポート
バージョン19(2019年9月リリース)
- 性能向上
- 勾配計算の大幅な改良による構造最適化や振動解析の高速化
- 振動解析
- 有限差分法を用いた基準振動(周波数と固有ベクトル)計算
- 新しいハミルトニアンの実装
- PM6 – Stewartの定評のあるハミルトニアン
- RM1 – AM1パラメータの改良版
- hpCADD – 分子静電ポテンシャルなどの特性を計算するための専用ハミルトニアン
- MNDO-F – 自己無撞着、多中心、異方性のある “ファインマン “分散補正で拡張されたMNDO
- 励起状態
- 励起状態と非周期系のバンドギャップに対するCI計算、標準CI、UNO-CI(周期系CI計算は実装済)
動作環境
- バージョン20(2020年9月リリース)
- Windows
- Linux
ライセンス形態
教育機関向け無償ライセンス
アカデミックユーザは、旧バージョンEMPIRE18を無償でご利用いただけます。利用するには、ユーザー登録および使用コンピュータのMACアドレス、ホスト名またはIPアドレスが必要です。詳しくは、お問合せください。
使用許諾条件
使用許諾条件の詳細は、こちらをご覧ください。
価格情報
EMPIREのライセンス価格は、一般用とアカデミック用で異なります。ユーザライセンス形態と価格については、お問い合わせフォームからお問い合わせいただくか、弊社営業までお問い合わせください。
一般用
商品名 | 価格 |
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EMPIRE20 シングルノード Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
EMPIRE20+EH5CUBE シングルノード Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
EMPIRE20 マルチノード Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
EMPIRE20+EH5CUBE マルチノード Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
EH5CUBE ポストプロセッサ Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
Cepos Suite シングルノード Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
Cepos Suite マルチノード Site 年間ライセンス | お問い合わせください |
教育用
商品名 | 価格 |
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EMPIRE20 シングルノード Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
EMPIRE20+EH5CUBE シングルノード Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
EMPIRE20 マルチノード Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
EMPIRE20+EH5CUBE マルチノード Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
EH5CUBE ポストプロセッサ Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
Cepos Suite シングルノード Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
Cepos Suite マルチノード Site 年間ライセンス 教育用 | お問い合わせください |
※マルチノードライセンスには、シングルノードプログラムも含まれます。
※Cepos Suiteは、EMPIRE+EH5cube+ParaSurf+CImatchのセット商品です。
最終更新日:2021/03/04